あの年になってもまだ女遊びに明け暮れているのかどうかは分からないが、尚昌が実家に来ることを期待しても、逆に尚昌の家に行こうとは思わない。そして、清和の一人住まいのアパートに来るはずもないことを知っているので、それならばいっそアパートを売り払って実家に帰ることも考えた。

 だが、その理由を追及されたら面倒であるうえに、そこまであからさまな行動に出たところで尚昌と自分がどうこうなるという未来は望めない。近親相姦であるということは一切考えないようにしても、何度も同じ答えは出ている。

 そう、たとえこんな誘惑が訪れてもだ。

「清和、二十歳の誕生日おめでとう。ほら、おじちゃんとお酒でも飲み比べしないか」

 10月10日という覚えやすい日に生まれたためか、それともたまたまなのか、おそらく後者だろうが、尚昌が実家に訪れて清和に缶ビールを勧めてきた。すでに本人は清和が来る前から飲んでいたらしく、顔が赤らんでいる。

 酔った尚昌は妙に色気がある。そして、母の前だというのにやたらとくっついてきて、頬にキスまで仕掛けてきたのには慌てた。酔ったらキス魔になるのだろうかと思ったが、母に対してそれを仕掛けたりはしない。兄嫁に手を出せないという強固な理性が働くのならば、どうして自分に対してはこうなのか謎だ。

 あくまでも冗談で済ますことができる相手だと見くびられているのか。そう思うと、苛立ちが募ってきて尚昌が飲みかけのビールを奪い取って煽った。

「お、いきなり一気飲みか。やるな清和」

「ちょっと尚昌さん、あまり清和を煽らないで。お酒は私も一輝さんもあまり強くないから、たぶんこの子も……」

 年甲斐もなくはしゃいでいる尚昌に反して、母の慌てたような声がした気がした。しかし、顔にかっと熱が上がってきたと思ったら、強烈な眠気に襲われて尚昌の方にもたれかかったのを最後に、意識が闇に飲み込まれていった。

 

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