6

 レイドールとマンホークらの住居を盗み見ていた男たちは、皆一様に黒服に身を包んでいた。そして、車内で誰一人口を開かないかと思えたが、レイドールらの住居からそれなりの距離を走ったところで、助手席に座っていた一人がふいに携帯電話を取り出し、操作する。

 電話の相手はワンコールで出たらしく、黒服の男は言った。

「例の双子ですが、カーライル様の睨んだ通りの場所に潜伏していました。それから、お耳に入れておいていただきたいことが。……ええ、その盗聴器で入手した情報によりますと、彼らはZに会いに行くようです。幾分か押し問答していましたが、おそらく近いうちに行くかと。……はい、今からそちらに向かいます」

 そのまま通話を切った黒服は、他の黒服たちとともにしばらく車を走らせ、大豪邸の中に入って行った。

 玄関口に立っていたのは彼らのボスではないが、ボスの右腕である有能執事のカーライルだ。黒服らに事情はあまり知れ渡っていないが、表向きはボスのエドウィンは何かしらの病で倒れ、しばらくカーライルが代わりを務めることになっていた。

 本当のところ、エドウィンは今朝方に一週間ぶりに目を覚ましたのだったが、裏社会に精通する方の彼は眠りについたままだったため、一時的にそのような処置を取ることとなった。

 医師曰く、おそらくしばらくは精神的に不安定な状態が続き、頻繁に入れ替わったり、逆に全く入れ替わらなかったりすることもあるらしかった。そしてその影響で体に負担がかかり、突然倒れ込むように眠ってしまうことも度々起こってしまうだろうということだ。

 そんな状態で仕事が手につくはずもなく、カーライルが可能な限り代役を務めるのは当然の流れだったが、詳しい事情を知らない部下の黒服たちにも動揺が広がるのは無理もなかった。そして、このようなことが続くとなれば、エドウィンの二つの顔についての事情もそろそろ公にせざるを得なくなるのではないかという懸念もあった。

 むしろこれまで隠し通せたのが不思議なくらいだと思いながら、ルエルは目覚めたばかりのエドウィンがポタージュスープを飲むのを手伝っていた。生死の境を彷徨ったわけではないのだが、実に一週間ぶりの目覚めとあって、飲ませてほしいと甘えられては断れなかった。

 カーライルに指示を飛ばす元気があるのかと思ったのだが、二人きりになった途端に気が抜けたのか、目眩がすると言って額に手を当てたので慌てた。

 そして、目をつぶるエドウィンの髪を、ここ数日の癖で撫でていると調子に乗らせてしまい、今のような有様になっているということだ。

「ルエル」

 無事に完食したポタージュスープを下げてもらうか迷ううちに声をかけられ、テーブルの上に乗せて振り返ると手招きされた。

 首を傾げながら近付くと、腕を広げて思い切り抱き寄せられ、そのまま甘い口付けが降ってくる。それを素直に受け入れていると、服の裾から手のひらが侵入してきたので、反射的に押し止めた。

「駄目?」

 唇を離し、至近距離で悲しそうに聞かれると、抵抗する気が急速に萎んだ。しかし、事に及ぶ前に約束させることは忘れなかった。

「終わったら、これからのこととか聞きたいことがある」

 それだけで何の話か察したのか、エドウィンはすぐに頷いた。

「いいよ。あ、その前に鍵を閉めないとね」

 意図を察して、扉の鍵を施錠して戻ってくると、招かれる前に自らエドウィンの上に伸し掛かった。

「えっ、と……ねえルエル、そっちなの?」

 エドウィンの戸惑ったような声と表情に微笑み、舌先で唇を湿らせながら言った。

「まだ本調子じゃないからな。優しくしてやるよ」

「えっ、ちょっと待っ……」

 困惑や動揺を顕に逃げを打つエドウィンの腰を捕まえ、ずるりと一思いに脱がしてしまうと、まだ反応を示していないが十分に立派なイチモツが現れた。巨根でなくて良かったと僅かに安堵しながら、やわやわと揉みほぐすようにして先の方にキスを落とす。

「っ、……ぅ」

 それだけでびくりと反応し始め、エドウィンの口から吐息が漏れる。その反応に満足し、先の方を咥えて飴玉のように舐めていると、むくむくと硬さを増していった。

「る、えるっ……るえる……」

 手で上下に擦りながら口淫を続けていると、舌足らずな発音でエドウィンが名前を読んできて、ぞくりと興奮を覚えた。髪を撫でられて上目遣いに見上げると、エドウィンは顔を赤らめ、潤んだ瞳を欲望に燃やしていた。

「ルエル、もう……」

 十分に硬度を増したところで彼がそう言ったのを合図に、ルエルは自分の穿いていたズボンを下着ごと脱ぎ捨てると、解しもしていない臀部の奥にエドウィンのそれを入れようとした。

「は?え?ちょっと」

 本気で自分が犯されると思っていたらしいエドウィンは、案の定展開についていけないのか、目を白黒させながら慌て始めた。

 それをおかしく思いながら、「ありがたく処女を受け取れよ」と言って挿れようとしたのだが、やはり解していないのでなかなか入らない。そして、人よりも痛みに鈍い気がしていたルエルだが、さすがに穴が裂けるように痛い。

「ルエル、大丈夫?」

 歯を食いしばって無理やり挿れようと奮闘していたせいか、気がつけば目尻から痛みで涙が零れ落ち、エドウィンの頬にかかっていた。エドウィンも苦しいはずだが、それを感じさせない様子でルエルを心配してきた。

 そして、ルエルの返事を待たずにいきなり腰を掴むと、強い力で体を持ち上げるようにしてきたかと思うと、そのまま手品のように素早く体勢を入れ替えていた。

 反対に見上げるかたちでエドウィンを見つめていると、彼は心配げにルエルの臀部を広げ、奥の部分を確認するように見た。

「良かった、見たところまだ血は出てないね。もう、無理したら駄目だよ。僕が解してあげるから。ね?」

 諭すように言われて素直に頷くと、悶たくなるほど優しい愛撫が始まった。解すどころか、全身を余すことなく隅々まで知り尽くさないと気が済まないというような触れ方に、自然と息が乱れた。

「エド……っ、解すだけで……」

「んー?」

 先ほどのお返しとでもいうように、殊更丁寧に股間のものをしゃぶられると、腰が反り返るほど感じてしまった。エドウィンはいくらルエルが抗議の声を上げようと、喘ぎ声しか出せなくなり、何度欲望を爆ぜてもなかなかやめてくれずに。

「や、やだっ……変になっ……エドっ、もっと……」

 いつしか自分でも信じられないような声を発しながら、そのつもりがなくとも甘えたように名前を呼んでいて。やめてほしいのか、もっとやってほしいのかさえ分からなくなりながらびくびくと震え、涙を零していた。

「それいいね。今度からはエドって言って」

 息が乱れ、無意識に呼んだ呼び方を喜ばれ、大して働かない頭で頷きながら、強請るように見つめていると。察してくれたのか、エドウィンは微笑みながら一つキスをしてきて、囁いた。

「そうだね。僕ももう限界」

 言うが早いか、エドウィンは双丘を押し広げてくると、粘ついた精液を潤滑剤に、指を中へ挿し込んできた。異物感よりも期待のために締め付けてしまうと、彼は低く笑い、出し入れを繰り返しながら徐々に増やしていった。

 いいところに触れるか触れないかのじれったい解し方に音を上げ、急かすように睨みつけると。

「いいね、その目。ぞくぞくする」

 と、いかにも変態臭い台詞を吐いたかと思えば、更に要求が続いた。

「ね、挿れてほしい?エド、お願い挿れてって言って」

「……」

「ほら、早くしないと誰か来るよ」

 そもそもがこの要求自体なければ早く済ませられるのではないかと思いつつも、中が疼いて仕方がなかったので従う他なく。捻りの効いた返しをする余裕もなかったので、取り敢えずエドウィンの顔をぐいと引き寄せて唇に噛み付くようなキスを仕掛けて言った。

「エド、早く俺を食え」

「お願い、は?」

 狙ったわけではないのだが、最後の挟持を投げ捨てて言った次の台詞は絶妙にエドウィンを煽ったらしい。

「……っねが、いだ。お前が欲しくて変になる。早く責任取れ」

「っ……」

 あっ、と思った時には、エドウィンは焦らしていたのが嘘のように性急にルエルを貪っていた。ようやく求めていたものが中に収まり、満たされて安堵する余裕もなく、彼は荒れ狂う海のように寄せては返す波となって、間断なくがくがくと揺さぶってきた。

 初めはその勢いに飲まれ、恐ろしいほど際限のない快楽に流されるばかりで何も考えられなかったが、次第に慣れてくると、自分に全身で愛情をぶつける彼が愛おしいと感じ始めた。そのことに気が付くと、どうしてもそれを伝えたくて堪らなくなって。

「エドウィン、エドウィン」

 わざとなのか、それとも行為に夢中になっているのか、そう呼んでも反応がなかったので、呼び方を変えた。

「エド、どうしよう」

「どうしたの?」

 今感じている不安にも似た感情は、どこか遠く失われた記憶を取り戻した時のようで、幼子のようにまっさらな思いのまま口にした。

「初めてなんだ。こんな気持ちになるのは。いいや、本当は前からエドに対して薄々感じてたんだけど、やっとはっきり分かったから言えるよ。お前が、愛しい。愛しくて堪らない」

 そう言った途端、エドウィンは感極まったように涙ぐみながら抱き締めてきた。

「ルエル、僕も。僕も愛してるよ。ああ、夢みたいだ」

 エドウィンと抱き締め合い、笑い合いながらより一層深く互いの体を慈しんでいると、それまで考えていたエドウィンと彼についての悩みについても、嘘のように前向きに捉えられるようになってきた。

 たとえもう一人のエドウィンが自分を愛していなくても、自分が一方的にでも愛していればいいのだ。そして、たとえ二度と会えなくなっても、彼の中で眠り続けていることには違いないのだからと。

 

 しばらく抱き合って満足した後、十二時の鐘がなったのを皮切りに、それぞれ着衣を整えて仕事の話をする姿勢になった。

「そういえば、ルエル、仕事は?」

 用心のために再びベッドに横たわろうとしたエドウィンだったが、シーツの状態が明らかな情事の跡を残していたので、剥ぎ取って洗面台の方に向かった。

「カーライルから誤魔化してもらって、しばらく半日で働いてる。何か緊急の時は融通が効くから助かってる」

 ついていきながら答えていると、エドウィンは備え付けの自分専用と思われる洗濯機にシーツを入れた。執事やらが仕える大豪邸に暮らすにも関わらず、驚くべきことだが、エドウィンは何かと料理やら家事に精通しているように思える。

「そっか。また僕のところに帰って来てもいいんだよ?というか、むしろ一緒に暮らしたいと思うんだけど……いろいろ済んだら考えてほしいな」

「ああ、そうだな。落ち着いたらそれもいいな」

 一人暮らしは自由でいいが、どちらにしろよくエドウィンが訪れていたので、一緒に暮らしてもあまり変わらないだろう。何よりも、今ならば素直に一緒に暮らしたいと思える。

「それで、さっき言ってた聞きたいことって、やっぱり双子のこと?」

「それもあるんだが……」

 ルエルが先を続けようとした時、廊下で騒がしい足音と、「困ります。エドウィン様に確認を……」と言っている声が聞こえてきた。

 エドウィンと顔を見合わせていると、荒々しいノックの音がして、若い男の声がした。

「そこにいるんだろ?出てこい、エドウィン・ジョーカー」

「君は誰だ」

 ドア越しにエドウィンが緊張を孕んだ声で尋ねると、相手ははっきりと言い放った。

「お前が盗聴していた被害者、レディだ。言い逃れはできないぞ。俺たちをなめてもらっては困る」

 それを聞くと、エドウィンは驚きや焦りは微塵も出さずに、落ち着き払った様子でドアに近付いて言った。

「残念ながら、君たちが会いたがっている方の男じゃないけどね」

 そして、ドアを開いた途端だった。ルエルが咄嗟に伏せろ、と叫ぶ前に、エドウィンはドアの向こうにいた相手に銃口を向けられていた。

「エドウィン!」

 不安だったこともあるが、相手の注意が自分に逸れるように叫んだのだが、エドウィンは片手でルエルを制した。

「何のつもりだい?」

「ただの挨拶だよ」

 そう言うと、レディと思われる人物は躊躇いなく引き金を引いた。もう一人のエドウィンならば避けることは造作もないだろうが、残念ながら今は違う。

 駆け寄ろうとするも、間に合わないと絶望が押し寄せてきたのだったが、恐れていた瞬間はやって来なかった。エドウィンは何事もなくその場に立っている。

 一瞬、レディはわざとエドウィンからすれすれの位置に銃を放ったのかと思ったのだが、続いて降ってきたエドウィンの口調、そして空気からそうでないことを知った。

「ずいぶんなご挨拶じゃねえか。せっかく俺はこのまま眠りに就こうとしてたのに、そういうわけにもいかねえというわけか」

 命の危機に遭遇し、反射的に現れたのだろうが、彼は驚くことに、素手でレディが持つ銃口を掴み、天井に逸れるように上向けていた。彼であれば簡単に避けることもできたはずだが、まさか後ろにいたルエルを気にしたのだろうか。

「お前……」

 明らかに様子の違うエドウィンに困惑したのか、レディは銃を下げる。

 その後ろに立つ男と、レディという男に見覚えがあったルエルは、彼らとは別の意味で驚いていた。数日前に屋敷の前でぶつかった二人だからだ。まるで似ていないが、この二人がまさか例の双子だろうかと想像を働かせた時、レディの後ろにいた男は言った。

「エドウィン・ジョーカーは二重人格だという噂は本当だったんだな」

「そうなのか?」

「なぜ身内にもほとんど明かしていない情報をお前が知っている?」

「それは……」

 エドウィンの問いに対して男が口籠ると、廊下にいたカーライルが口を挟んできた。

「エドウィン様、大事な話でしたら人払いを」

「ああ、任せた。マン、レディ、お前らは部屋に入れ」

「なんであんたに命令されなければいけない」

「レディ、いいから入ろう」

 マンに宥められ、渋々といった様子でレディも中に入ると、後ろで戸を締めた。そして、家主であるエドウィンの許しも出ていないうちに、勝手に部屋にあるソファにどかっと腰を落とした。見た目に似合わず豪快というか、男らしい性格のようだ。

「マン、お前も適当に座れ。お前らの事情を詮索するのは野暮だと思うが、Zに会いに行くのであればそういうわけにもいかねえ」

「Z?」

 聞き慣れない単語だったが、ふと罪人コレクターであるあの男もAとかいうふざけた名前だったと思い出す。これもコードネームか何かだろうと思いつつ、つい聞いてしまうと、マンという男は簡単に説明してくれた。

「ルエル・ローランド。あんたも元この世界の人間であれば、知っていて損はない人物だ。最も危険な人物で、エドウィン・ジョーカーも唯一叶わない相手だ」

「俺のことはエドウィンでいい。そうだな、叶わないと言えば聞こえが悪いが、あいつは流石の俺も諦めざるを得なかった。危険さで言うなら、俺としちゃそいつの方が危険だと思うが。奴の場合と違って、自分が血に飢えた化物だと自覚してねえから手に負えない」

 そう言いながらエドウィンが示したのは、ルエルではなくレディだった。確かに喧嘩っ早く血の気が多そうに見えるが、かつての自分より危険かどうかと考えても、そうでもないように思えたのだが。無論、双子から発せられる身も凍る殺気を考慮に入れた上でだ。

 すると、ルエルのその反応に気が付いたのか、エドウィンは「お前は今は違うからな」と付け加えた。

 一方、化け物扱いされた当の本人であるレディは、一瞬明らかな困惑を露にしたかに思えたが、即座に表情を消して話題の転換を求めた。

「それよりも、わざわざ俺たちの居所を突き止めてどういうつもりなんだ。何か話があるんだろ。まさか今になって捕まえようとしているわけではないだろうが」

「そうだな。話が脇道に逸れていた。お前らを調査していたのは、他でもない警察からの依頼で捕らえるようにと言われたからだが、今はそれどころじゃねえから横に置いておく。端的に言うと、Zに会いに行くというのなら、俺も連れて行け」

 予想外の言葉だったのか、レディはもちろん冷静そうなマンでさえも驚き、同時に「は?」と口にした。

「なぜなのか、というのは説明が面倒だが、俺の利益のためだ。Zを捕まえてどうこうするにも、お前らの手があればなんとかなりそうだから、とでも言っておく」

 それは暗にそれ以外の理由があることを匂わせる発言だったが、レディはともかくマンは即答した。

「何の狙いかは敢えて聞かないが、それは助かる」

 すると、すかさずレディが食って掛かった。

「はあ?お前、こんな奴信用できるのかよ。Zに会う前に豚箱に逆戻りなんてことになったらどうするんだ」

「簡単に入れられるつもりはない。それに、俺たちだけでは相手が悪い。いくら殺し合いをしに行くのではないにしても、万が一がある」

「それはそうだが」

 納得のいかない顔をしつつも、反論の言葉も見つからないのか、レディは不機嫌そうに口を噤んだ。

 それを横目に、Zに会いに行く段取りを進めようとするエドウィンに対し、ルエルは口を挟んだ。

「俺もついて行ったら駄目だろうか」

 少なくとも戦力外と見なされない働きはできると思って言ったのだが、エドウィンは顔を顰めた。

「駄目だ。命の危険がどうのこうの以前に、お前は日の下で生きていくことに決めたじゃねえか」

 それはそうだと納得しかけたのだが、今の状態のエドウィンを行かせるのには一抹の不安があった。もしエドウィンが、危険な場面で表の彼に戻ってしまったら、誰が彼を守ってくれるというのだろう。双子も自分たちを信用していないが、ルエルからしても彼等はまだ信用に足る相手ではない。

「俺はいざという時、エドウィンを守るためだけに行く。護衛だ。無駄な殺生はしない。だから頼む。連れて行ってくれ」

 我ながら、らしくもなく必死になっていると思ったが、言われたエドウィンもぽかんと口を半開きにしていた。

「お前……」

「いいんじゃないか。俺はそいつを知らないが、少なくともただの一般人ではない目をしているのは分かる」

 意外にも真っ先に助け舟を出したのはレディで、マンはそれに乗るかたちで同意した。

「ああ。俺も寧ろついて来てもらえたら助かる。ルエル・ローランドの経歴もなかなかで、短期間でかなり名を馳せていたからな」

 一体、マンの情報網はどこから得て、どこまで及んでいるのか純粋に興味があったが、それはまた別の機会に聞くこととした。

「お前らの言い分は分かった。仕方ねえ。足を引っ張るんじゃねえぞ。ちなみに俺の部下は、相手に無駄に警戒心を与えないために連れて行かないことにする。それから、実行に移す前に一ついいか、マン」

 怪訝そうな顔をしたマンに対し、エドウィンは意味深な台詞を放った。

「俺の予想が当たってたらだが、お前はこうなって本当にいいんだな?」

 マンはその台詞の意味をすぐに理解したようで、僅かに苦笑いするような面持ちで頷いた。

「……ああ。いつかはこうなると思っていたからな」