終章

 あれから月日が流れ、卒業式の日を迎えた。桜舞う季節になると、自然と母のことを思い出す。櫻人と人の間に産まれたという自分が果たしていつまで生きられるのか、そもそもが本当に櫻人というものが存在するのか、結局明らかになっていないが、少なくともこの花弁に自分と近しいものは感じる。

 卒業証書を片手に、桜に抱かれるようにしながらゆったりと歩いていくと、不意に一陣のつむじ風が吹いて、桜の花弁が舞い上がる。それに煽られて一瞬目を閉じると、再び目を開けた瞬間、向こう側に懐かしい人が立っているのに気が付いた。

 じっと見つめていると、向こうも気が付いたようで手を上げた。少しだけ大人びたその笑顔に向かって、走り出す。

 桜の木々が笑うように葉を揺らしてざわめいた。

 

「櫻人2」へ続く