俺は今日、かみべさんといけちゃんが配信中に何回もキスをするのを見せられて、心中穏やかじゃなかった。
1回は俺にキスしてくれたが、それ以外はいけちゃんばかりにしているかみべさん。
俺はあまり嫉妬する方の人間じゃない気がするけど、今日ばかりはもやもやせずにいられない。
でも、配信中はキスをする二人を盛り上げるつもりで笑う。
かなり乾いた笑いになった自覚はあったし、カメラ目線に戻して見ないようにした。
そんな俺の気持ちに気付いてくれないかみべさんは、動画の最後までいけちゃんにばかり絡んでいた。
配信後、すぐにいけちゃんのライブ配信が始まったんだけど、その配信を傍《はた》から見守り、時に盛り上げている俺に、かみべさんが近づいてきた。
「なに」
かみべさんがやたらと俺にひっついてくるので、俺はいつもの調子で笑いながらかわそうとする。
そんな俺に、かみべさんが動画に聴こえない声量で囁いた。
「妬いた?」
「妬いてないから」
即答したのがかえって悪かった。
かみべさんは嬉しそうに笑い、ぐっと顔を寄せてきて、俺に優しいキスをくれる。
「ちょ、なん……」
「ずっとキスして欲しそうだったから」
「そんな、わ……んっ」
いけちゃんの配信があっているというのに、その裏側で俺たちは何をしているんだろう。
そう頭の片隅で思いながらも、嬉しく思う気持ちは抑えきれなかった。
END
next……10、水底の檻へ